実務ガイド
一人社長の自宅の家賃は経費にできる?社宅にするときの本人負担の計算
結論
向いている
自宅の家賃を会社の経費にしたい一人社長
向いていない
「何割まで経費」という数字の基準を探している人
確認したこと・未確認のこと
実際に確認
- 自分で借りた家賃を会社が払うと給与(国税庁No.2600)
- 社宅は本人から賃貸料相当額をもらえば給与にならない
- 小規模な住宅の賃貸料相当額の式(固定資産税ベース)
- 住宅の現物給与は令和8年10月1日から1㎡単位(年金機構)
- 家事関連費の区分は個人の所得税の考え方(国税庁No.2210)
- 会社が借りた住宅に社長が住む形は社宅(No.2600)。事務所部分の按分は確認した範囲で見つからず
- 法人には家事費・家事関連費という概念がない(国税不服審判所の公表裁決、平成26年3月6日)
未確認
- 社長所有の自宅を会社に貸すときの法人側の要件(確認した範囲で見つからず)
- 住宅ローン控除への影響(同)
- 社宅の規程・決裁の要否(法人税側。同)
この記事を検証した条件(2026年10月24日)
公開 / 最終確認
- 国税庁タックスアンサーNo.2600と源泉所得税の質疑応答3件を確認(2026-10-24)
- 消費税法基本通達 第6章第13節(住宅の貸付け)を確認(2026-10-24)
- 国税庁タックスアンサーNo.1373・No.2210を確認(2026-10-24)
- 国税不服審判所の公表裁決(平成26年3月6日)を確認(2026-10-24)
- 日本年金機構の住宅の現物給与の改正資料を確認(2026-10-24)
この記事の目次(7項目)
自宅の家賃を会社の経費にしたいとき、「自分で借りたままでいいのか」「社宅にするとどうなるのか」で迷います。
結論から言うと、社長が自分で借りた家賃を会社が払うと、給与になります。経費にするなら、会社が借主になって社宅として貸し、本人から賃貸料相当額を受け取る形です。
ただし本人の負担額は、小規模な住宅かどうか(床面積と建物の耐用年数)で計算が変わります。得になるかどうかは、この記事では言いません。
自分が社長の1人会社(株式会社・合同会社)で、自宅の家賃を経費にしたい人向けです。
自分で借りた家賃を会社が払うと、どうなる?
国税庁のタックスアンサーNo.2600は、役員の社宅について、次のように書いています。
(3)現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担 社宅の貸与とは認められないので、給与として課税されます。
社長が自分の名前で借りた家賃を会社が払うのは、この「入居者が直接契約している場合」です。給与として課税されます。
毎月、住宅手当として現金で出すのはどうですか?
それも同じです。現金の住宅手当は、社宅の貸与とは認められず、給与になります。
給与として課税される分は、会社の経費の問題ではなく、社長本人の給与の問題になります。
社宅にするには、何が要る?
No.2600は、役員から1か月当たり一定額の家賃(賃貸料相当額)を受け取っていれば、社宅は給与として課税されないと書いています。形にすると、次の3つです。
- 会社が借主になる
賃貸借契約の名義を会社にします。
- 役員に貸与する
会社が借りた住宅を、住む役員(社長)に貸します。
- 賃貸料相当額を本人から受け取る
無償で貸すと、賃貸料相当額が給与になります。賃貸料相当額より低い家賃しか受け取らないと、差額が給与になります。
名義を変えるときは、賃貸人にも確認を
いま個人名義で借りている家を会社名義にしたり、会社が借りて本人が住む形にしたりするには、賃貸人の承諾が要ることがあります。これは国税庁の範囲ではないので、契約書と賃貸人に確認してください。
本人からいくら受け取ればよいかが、次の見出しです。
本人負担はいくらになる?
賃貸料相当額は、住宅が小規模かどうかで計算が分かれます。
小規模な住宅は、建物の法定耐用年数が30年以下なら床面積132㎡以下、30年を超えるなら99㎡以下です。法定耐用年数は、減価償却のために財務省令の別表で構造・用途ごとに決まっている年数で、築年数とは別です。自分の建物がどちらに当たるかは、税務署に確認してください。マンションなどは、共用部分を按分して専用部分に足した面積で判定します。
小規模な住宅の賃貸料相当額(月額)は、次の(1)〜(3)の合計です。
- (1)その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
- (2)12円 ×(建物の総床面積(㎡)÷ 3.3㎡)
- (3)その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%
家賃は式に出てきません。小規模な住宅では、家賃の何割という計算ではありません。
たとえば、次の数字を当てはめます。これは式の使い方を見るための架空の例で、実在の物件の額ではありません。
| 例の条件 | 数字 |
|---|---|
| 建物の課税標準額 | 600万円 |
| 敷地の課税標準額 | 300万円 |
| 建物の総床面積 | 33㎡ |
| 式 | 計算 | 月額 |
|---|---|---|
| (1) | 600万円 × 0.2% | 12,000円 |
| (2) | 12円 ×(33㎡ ÷ 3.3㎡) | 120円 |
| (3) | 300万円 × 0.22% | 6,600円 |
| 合計 | 18,720円 |
小規模でない住宅を、会社が他から借りて貸与する場合だけは、計算が変わります。会社が家主に払う家賃の50%と、自社所有の社宅の算式で出した額のうち、多いほうが賃貸料相当額です。自社所有の算式は、建物の課税標準額×12%と敷地の課税標準額×6%の合計の12分の1です(耐用年数30年超の建物は12%が10%)。
240㎡を超える住宅は、取得価額・支払賃貸料・内外装などを総合して、豪華社宅かどうかが判断されます。240㎡以下でも、プールなど一般の住宅にない設備があれば該当します。豪華社宅は、通常支払うべき使用料相当額が賃貸料相当額です。
マンションの共用部分や管理費は、どう扱いますか?
国税庁の質疑応答では、2点が示されています。
- 共用部分は、固定資産税の課税標準額も小規模かどうかの判定も、含めて計算する
- エレベーターの保守料などが家賃に含まれていても、その総額で通常の賃貸料の額を計算して差し支えない
課税標準額は、固定資産課税台帳に登録された価格です。式の「その年度の」とあるとおり、私の読みでは、年度が変わったら見直す数字です。
課税標準額が改訂されたときの再計算の免除(改訂幅20%以内、所基通36-46)は、国税庁の質疑応答では使用人の社宅についてだけ書かれています。
課税標準額の手に入れ方は、私の場合の見出しに書きました。
自宅兼事務所だから、家賃の一部だけ経費にできる?
会社が借りた住宅に社長が住む場合、国税庁が示している形は、ここまでの社宅です(No.2600)。本人が賃貸料相当額を会社に払う形で、事務所に使う部分の按分は、No.2600には出てきません。理由は、後の段落のとおり、会社に家事関連費という考え方がないためと考えられます。
家賃を事業分と生活分に分ける按分は、個人の所得税の考え方です。国税庁は、家事上と業務上の両方にかかわる費用を家事関連費として説明していて、必要経費になるのは「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」と書いています(No.2210)。私の読みでは、個人事業主は自宅の家賃も、この考え方で事業分と生活分に分けることになります。
会社には、家事関連費という考え方がありません。国税不服審判所の公表裁決(平成26年3月6日)は、個人の支出の取扱いは「家事費及び家事関連費という概念がない法人の支出に関する取扱いとはおのずと異なる」と説明しています。裁決は個別の事案への審判所の判断で、通達ではありません。個人事業主のロータリークラブ会費を巡る裁決の中の説明で、自宅兼事務所の家賃を直接扱ったものではありません。
次の3点は、私が確認した範囲では、はっきり書かれたものが見つかりませんでした。
- 社長所有の自宅を会社に貸すときの法人側の要件
損金に入れる要件や、賃貸借契約書が要るかは、見つかりませんでした。社長側は、不動産などの貸付けによる所得として不動産所得になります(No.1373)。
- 住宅ローン控除への影響
自宅の一部を会社に貸したときの影響は、確認できていません。
- 社宅の規程・決裁が要るか
所得税側は規程の有無を要件にしていないように読めますが、法人税側は確認できていません。
消費税には、はっきり書かれたものがあります。所得税の按分とは別の話です。
消費税では、住宅と事務所が併設された建物を一括して貸すとき、非課税になるのは住宅として貸した部分だけです。貸付けの対価は、住宅部分と事務所部分に合理的に区分します(消基通6-13-5)。住宅として借りた建物を、契約を変えずに事業に使っても、課税仕入れにはなりません(消基通6-13-8の注)。
社宅は「得になる仕組み」として語られがちです。ただ国税庁の文が示しているのは、給与にならない条件と、本人負担の計算だけです。自分の場合にどうなるかは、自分で判断せず税務署に確認してください。
社会保険にも、別の計算がある?
あります。住宅の現物給与(会社が住宅を貸すことで受ける利益)は、社会保険の報酬にも関わります。
しかも、所得税の賃貸料相当額とは別の計算です。2つを混同しないでください。
日本年金機構の資料によると、住宅の現物給与の価額は、令和8年10月1日から計算が変わりました。
| 時期 | 計算 | 東京の例 |
|---|---|---|
| 令和8年9月30日まで | 居住面積1畳当たりの価額 | 1畳につき2,830円 |
| 令和8年10月1日から | 総面積1㎡当たりの価額 | 1㎡につき1,330円 |
価額は都道府県で違います。神奈川は2,150円から1,010円、大阪は1,780円から820円です。
10月1日からは、台所・トイレ・浴室・廊下を含めた総面積で計算します。別棟の物置・車庫や、共同で使っている部分の面積は対象外です。
資料の計算例(東京、居住室16畳・総面積40㎡)は、9月30日までが2,830円×16畳=45,280円、10月1日からが1,330円×40㎡=53,200円です。
家賃を本人から徴収している場合は、この価額ではなく、現物給与の価額から徴収額を引いた額が価額になります。私の読みでは、本人負担が現物給与の価額に満たないと、差額が社会保険の報酬に含まれます。
価額の改正は固定的賃金の変動に当たり、被保険者報酬月額変更届が必要になる場合があります。健康保険組合は、規約で別段の定めをしていることがあります。
実際に自分の標準報酬月額がどう変わるかは、個別の事情で決まります。年金事務所に確認してください。社会保険料の仕組みは「一人社長の社会保険料はいくら?2026年度(令和8年度)の早見表と払い方」にまとめています。
私の会社の場合は?
私の会社は、会社名義で借りた住宅に私が住み、今も自宅兼事務所です。
やったことは、次のとおりです。
- 契約は最初から会社名義にした
- 賃貸人には、実際に住む人(私)を契約で明示した
- 本人から受け取る額は、家賃の2割弱
- 賃貸料相当額は、国税庁のホームページの算定ルールで自分で計算した
- 本人負担は、給与から天引きしている
家賃の2割弱で足りているかは、物件が小規模な住宅かどうかで決まります。この記事では、そこまでは示しません。
計算には固定資産税の課税標準額が要ります。私は市役所で、固定資産評価証明書をもらってきました。窓口や必要な手続きは自治体で違うかもしれないので、自分の市区町村に確認してください。
まとめ
社長が自分で借りた家賃を会社が払うと、給与になります。経費にするなら、会社が借主になって社宅として貸し、本人から賃貸料相当額を受け取ります。
小規模な住宅の賃貸料相当額は、固定資産税の課税標準額から出す式で決まります。家賃の50%との比較は、小規模でない住宅を他から借りて貸与する場合だけです。
自宅兼事務所でも、会社が借りた住宅に社長が住む場合は、国税庁の説明では社宅として整理する形です。家賃を事業分と生活分に分ける按分は、会社には家事関連費という概念がないため、前提になりません。住宅ローン控除への影響などは、確認できていません。社会保険の現物給与は、所得税とは別の計算です。
自分の会社に当てはめるときは、税務署に確認してください。社会保険は、年金事務所に確認します。
自分への役員報酬の決め方は「一人社長の役員報酬は、いつ決めて、いつ変えられる?決算月別の期限と、期中に変える条件」で説明しています。会社と個人のお金の分け方は「一人社長の会社と個人のお金を分ける:法人口座はどこで作る?4つの口座の手数料と法人カードの選び方」にあります。
Sources
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm Title: No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁 Checked: 2026-10-24 Supports: 役員から賃貸料相当額を受け取れば給与として課税されないこと、現金の住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担は給与になること、小規模な住宅の判定と賃貸料相当額の式、小規模でない住宅を他から借りて貸与する場合の家賃50%との比較、豪華社宅
- URL: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/28.htm Title: 国税庁 質疑応答事例(源泉所得税)役員に貸与したマンションの共用部分の扱い(2025年8月1日現在) Checked: 2026-10-24 Supports: 共用部分を含めて固定資産税の課税標準額と小規模かどうかを計算すること
- URL: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/29.htm Title: 国税庁 質疑応答事例(源泉所得税)家賃にエレベーター保守料等が含まれる場合(2025年8月1日現在) Checked: 2026-10-24 Supports: 管理費等を含む総額で通常の賃貸料の額を計算して差し支えないこと
- URL: https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/04.htm Title: 国税庁 質疑応答事例(源泉所得税)固定資産税の課税標準額が改訂された場合(2025年8月1日現在) Checked: 2026-10-24 Supports: 課税標準額が固定資産課税台帳の価格であること、使用人に貸与した社宅は改訂幅20%以内なら再計算不要(所基通36-46)で、役員には書かれていないこと
- URL: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/06/13.htm Title: 消費税法基本通達 第6章第13節 住宅の貸付け関係|国税庁 Checked: 2026-10-24 Supports: 住宅と事務所が併設された建物では住宅部分のみ非課税(6-13-5)、住宅として借りた建物を契約変更なく事業に使っても課税仕入れに当たらないこと(6-13-8の注)
- URL: https://www.kfs.go.jp/service/JP/94/03/index.html Title: 公表裁決事例(平成26年3月6日裁決)|国税不服審判所 Checked: 2026-10-24 Supports: 個人の支出の取扱いは、家事費及び家事関連費という概念がない法人の支出の取扱いとは異なると審判所が説明していること(個人事業主のロータリークラブ会費を巡る裁決。自宅兼事務所の家賃を直接扱ったものではない)
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm Title: No.2210 必要経費の知識|国税庁 Checked: 2026-10-24 Supports: 家事上と業務上の両方にかかわる費用(家事関連費)は、個人の所得税で、業務に直接必要だったことが明らかに区分できる金額だけが必要経費になること(会社の場合は書かれていない)
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm Title: No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁 Checked: 2026-10-24 Supports: 不動産などの貸付けによる所得は不動産所得になること
- URL: https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150511.files/2026.pdf Title: 令和8年4月から現物給与の価額が改正されます|日本年金機構 Checked: 2026-10-24 Supports: 住宅の現物給与の価額が令和8年10月1日から総面積1㎡当たりに変わること、東京・神奈川・大阪の価額、台所・トイレ・浴室・廊下を含めること、家賃を徴収している場合は価額から徴収額を引くこと、被保険者報酬月額変更届、健康保険組合の別段の定め