実務ガイド
一人社長の出張旅費規程は、本当に要る?日当が認められる範囲と、決めておく項目
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結論
向いている
自分の出張の日当・交通費・宿泊費を経費にしたい一人社長
向いていない
日当の相場や規程の雛形をそのまま使いたい人
確認したこと・未確認のこと
実際に確認
- 旅費規程は非課税の要件として書かれていない(所基通9-3)
- 判定は「通常必要な範囲」。見る点は2つ(所基通9-3)
- 国内出張旅費は規程がなくても帳簿のみで控除(原則課税)
- 旅費法の日当は令和7年4月に宿泊手当へ(財務省)
未確認
- 役員だけの規程でよいか
- 国内の役員の日当の法人税上の扱い
- 決議・議事録の要否
- 日当の金額の目安(国税庁は示していない)
この記事を検証した条件(2026年10月8日)
公開 / 最終確認
- 国税庁の所得税基本通達9-3・9-4、消費税法基本通達11-6-4を確認(2026-10-08)
- 国税庁タックスアンサーNo.6459(出張旅費)・No.5388(海外渡航費)を確認(2026-10-08)
- 国税庁インボイスQ&A問107・問107-2・問110と出張旅費等特例の資料を確認(2026-10-08)
- 財務省『ファイナンス』の旅費法改正の解説を確認(2026-10-08)
この記事の目次(9項目)
出張の日当や交通費を会社の経費にしたいとき、「旅費規程がないとダメ?」と迷います。
結論から言うと、国税庁の文は旅費規程を要件にしていません。見られるのは、その出張にとって「通常必要な範囲」かどうかです。
この記事は、自分が社長の1人会社(株式会社・合同会社)で、出張の日当・交通費・宿泊費を扱う人向けです。規程の雛形と日当の金額例は載せません。公式に基準がないからです。
旅費規程は、そもそも要る?
国税庁の文を読むかぎり、要件として書かれていません。
出張旅費が所得税の非課税になる根拠は、所得税法9条1項4号です。条文は、旅行に必要な支出に充てる金品で「通常必要であると認められるもの」と書いています。
条文を具体化した所得税基本通達9-3にも、旅費規程の語は出てきません。
消費税はもっとはっきりしています。国税庁の資料は、社内規程や基準があるかどうかにかかわらず、通常必要と認められる部分は出張旅費等特例の対象と書いています。
規程がなければ、何も決めなくていいんですか?
そうではありません。線を引くのは規程の有無ではなく、金額が通常必要な範囲か、です。
ここからは私の読みです。規程は要件ではありませんが、通常必要な範囲だったと後から説明するための基準を文書にしておくと役に立ちます。決める項目は、6つ目の見出しにまとめました。
「通常必要な範囲」は何で決まる?
所得税基本通達(国税庁が条文の読み方を示した文書)の9-3は、非課税になる範囲を決めています。以下、所基通9-3と書きます。
見るのは、その旅行の目的、目的地、行路や期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容と地位です。そこから見て、通常必要とされる費用に充てられると認められる範囲内の金品が、非課税です。
範囲内かどうかを判定するときは、次の2点を勘案します。
| 見る点 | 通達の趣旨 |
|---|---|
| 1. 支給の基準 | 役員と使用人のすべてを通じて、適正なバランスが保たれている基準で計算された額か |
| 2. 他社との比較 | 同業種・同規模の他の会社が一般的に支給している金額に照らして、相当と認められる額か |
範囲を超えた部分は、非課税になりません。所基通9-4は、勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行の場合、超える部分を給与所得としています。
見られるのは「規程があるか」ではなく、「この出張で、この額は普通か」です。日当を決めるときも、この問いに戻ると迷いません。
日当はいくらまで?
国税庁は、日当の金額(円)を示していません。判断の軸は、前の見出しの「通常必要な範囲」です。
「国家公務員の日当を目安に」という説明があります。ただ、公務員の旅費を定める旅費法の改正法は令和7年4月1日に施行され、旧「日当」は「宿泊手当」に変わりました。
財務省の解説では、宿泊手当は宿泊を伴う旅行(2日以上の期間にわたる旅行)について、一夜当たりの定額を支給する仕組みです。日当という名前の目安は、もう公務員の側にもありません。
所基通9-3やタックスアンサーNo.6459には、旅費法を基準にするという文がありません。古い目安を金額の根拠にするのは避けたほうが安全です。
では何を根拠にするか。私は、同業種・同規模の会社の支給状況と、出張の中身(目的、期間、宿泊の要否)を、後から説明できる形で残しておくことだと考えます。
消費税はどうなる?
消費税を原則課税(仕入れの実額で計算する方式)で申告している会社なら、通常必要な範囲の国内出張旅費は帳簿だけで仕入税額控除(払った消費税を、納める消費税から差し引くこと)ができます。免税事業者、簡易課税、2割特例の会社は実額の控除をしないので、この節は関係ありません。
国内の出張旅費、宿泊費、日当のうち、通常必要と認められる部分は課税仕入れ(消費税がかかる経費の支払い)になります。社長本人のような役員への支給も対象です(タックスアンサーNo.6459)。
ポイントは次の3つです。
- 消費税では、適格請求書(インボイス)の保存は要らず、一定の事項を書いた帳簿の保存で足りる
- 社内規程の有無、概算払いか実費精算かは問わない
- 通常必要な範囲を超える部分は、給与として扱われ、仕入税額控除の対象外
「通常必要な範囲」の判定は、所基通9-3の例によります。つまり、所得税が非課税になる範囲の中で、帳簿だけの特例が使えます。
規程がなく、実費で請求した交通費を払った場合も、その額が通常必要と認められるなら特例の対象です。また、規程の金額を超えて払った場合も、通常必要な範囲の額までは特例の対象です(どちらも国税庁の資料の例)。
実費精算でも、請求書が要る場合
実費精算が、会社が用務先に直接払ったのと同じと見られる場合は、通常必要な範囲かどうかにかかわらず、帳簿に加えて適格請求書などの保存が必要です(インボイスQ&A問107-2)。どこからが「同視」かは、国税庁の資料に例がありません。
帳簿には、通常の記載事項に加えて、出張旅費等など「帳簿のみで足りる仕入れ」に当たる旨を書きます(問110)。
海外出張は?
海外は、消費税では国内と扱いが分かれます。
| 税目 | 海外出張の旅費・日当 |
|---|---|
| 消費税 | 原則として課税仕入れにならない(No.6459) |
| 法人税 | 業務の遂行上必要で、通常必要と認められる部分に限り、旅費として経理できる。超える部分は原則として給与(No.5388) |
観光渡航の許可を得て行う旅行や、主として観光目的の団体旅行などは、業務の遂行上必要な海外渡航に原則として当たりません。業務の部分と観光の部分を併せて行ったときは、旅行の期間の比などであん分します。
海外出張は、消費税では原則として課税仕入れにならないため、国内の「帳簿のみで控除」の話は当てはまりません。所基通9-3は国内と海外を分けて書いていません。海外の日当の非課税の範囲は、税理士か税務署に確認してください。
規程に決めておく項目は?
公式に、規程の必須項目の定めはありません。そのため、ここは私の読みです。
所基通9-3が判定の材料に挙げる、目的、目的地、期間、宿泊の要否、職務内容と地位を踏まえて、私なら次の項目を決めておきます。後から説明しやすくなります。
- 対象にする出張:事業上の用務で、勤務地を離れる出張であること
- 区分:日帰りか宿泊か、期間の長短で分けるか
- 金額の決め方:日当は定額か、実費か。定額なら、何を根拠にその額としたか
- 精算の方法:概算払いか実費精算か(消費税の特例は、どちらも問わない)
- 記録:出張ごとに、目的、行き先、期間を残す
金額の根拠には、前の見出しの2点(勘案する材料)が使えます。同業種・同規模の会社の支給状況と比べた記録があると、説明しやすくなります。
ネットの雛形を写すのではだめですか?
写した金額が、自分の出張にとって通常必要な範囲とは限りません。雛形は形を整えるのには便利ですが、金額の根拠にはなりません。
公式で決まっていない点は?
ここまでは、国税庁の文と私の読みを分けて書きました。次の4点は、読んだ範囲に記載がありません。自分の会社に当てはめるときは、税理士か税務署に確認してください。
- 役員だけの規程でよいか
所基通9-3の1点目は「役員と使用人のすべてを通じて」の基準です。使用人がいない会社への当てはめは書かれていません。
- 国内の役員の日当の、法人税上の扱い
海外渡航費はNo.5388に書かれていますが、国内の旅費・日当を法人税上どう扱うかは書かれていません。
- 決議・議事録の要否
規程を決めるのに、株主総会や社員の決議、議事録が要るかは書かれていません。
- 距離の基準
「何km以上から出張」という数字の基準は、通達にありません。
出張の精算を帳簿に残すには?
原則課税の会社なら、通常必要な範囲の国内出張旅費は、帳簿のみで仕入税額控除ができます。帳簿は会計ソフトでつけると、日付・金額・内容をまとめて残せます。
まだソフトを決めていない人や、乗り換えを考えている人の候補を並べます。
仕訳の件数や料金で比べるなら「一人社長が選ぶクラウド会計ソフトは?freee・マネーフォワード・弥生を比較」にまとめています。
自分への役員報酬の決め方は「一人社長の役員報酬は、いつ決めて、いつ変えられる?決算月別の期限と、期中に変える条件」で説明しています。
まとめ
国税庁の文は、旅費規程を非課税や消費税の特例の要件にしていません。見られるのは、通常必要な範囲かどうかです。
通達が判定で勘案する材料は、役員・使用人を通じた基準と、同業種・同規模の会社との比較の2点です。日当の金額を国税庁は示しておらず、公務員の日当を目安にする説明は旅費法の改正で古くなりました。
国内の出張旅費は、原則課税の会社なら、通常必要な範囲で規程がなくても帳簿のみで仕入税額控除ができます。海外は消費税で原則として課税仕入れにならず、法人税でも業務上必要な部分に限ります。
規程を作るなら、通常必要な範囲だったと説明できる基準を残すことが目的です。役員だけの規程でよいかなど、公式で決まっていない4点は税理士か税務署に確認してください。
Sources
- URL: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm Title: 所得税基本通達(第9条第4号関係)9-3、9-4|国税庁 Checked: 2026-10-08 Supports: 非課税とされる旅費の範囲(通常必要とされる費用)と判定の2点、範囲を超える部分は給与所得、通達に旅費規程の語がないこと
- URL: https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=340AC0000000033;article=9 Title: 所得税法 第9条(e-Gov法令検索) Checked: 2026-10-08 Supports: 第1項第4号の、旅行に必要な支出に充てる金品で通常必要であると認められるものが非課税であること
- URL: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/06.htm Title: 消費税法基本通達 11-6-4|国税庁 Checked: 2026-10-08 Supports: 出張旅費等は通常必要であると認められる部分に限られること、範囲は所基通9-3の例により判定すること
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm Title: No.6459 出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い|国税庁(令和8年4月1日現在法令等) Checked: 2026-10-08 Supports: 国内は通常必要な部分が課税仕入れで帳簿のみの保存により仕入税額控除ができること、役員または使用人への支給、海外は原則として課税仕入れにならないこと
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5388.htm Title: No.5388 海外渡航費の取扱い|国税庁(令和8年4月1日現在法令等) Checked: 2026-10-08 Supports: 海外渡航の旅費は業務の遂行上必要で通常必要と認められる部分に限り旅費として経理できること、超える部分は原則として給与、観光目的の旅行、あん分
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/107.pdf Title: 問107(出張旅費、宿泊費、日当等)|国税庁インボイス制度Q&A Checked: 2026-10-08 Supports: 通常必要な部分は帳簿のみの保存で仕入税額控除ができること、判定は所基通9-3に基づくこと
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/107-2.pdf Title: 問107-2(実費精算の出張旅費等)|国税庁インボイス制度Q&A Checked: 2026-10-08 Supports: 実費精算も帳簿のみで足りること、用務先への直接支払と同視し得る場合は適格請求書等の保存が必要なこと
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/110.pdf Title: 問110(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項)|国税庁インボイス制度Q&A Checked: 2026-10-08 Supports: 通常必要と認められる出張旅費等が帳簿のみの保存の対象であること、帳簿への記載事項
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-138.pdf Title: インボイス制度における特例②(出張旅費等特例)|国税庁 Checked: 2026-10-08 Supports: 社内規程や基準の有無、概算払いか実費精算かにかかわらず通常必要な部分は特例の対象であること、超える部分は給与として仕入税額控除の対象外であること
- URL: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm Title: 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁 Checked: 2026-10-08 Supports: 2割特例は売上げの消費税額の80%を控除する方式で、令和8年9月30日までの日の属する課税期間まで適用できること
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm Title: No.6505 簡易課税制度|国税庁 Checked: 2026-10-08 Supports: 簡易課税では売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じて仕入れに係る消費税額を算出すること
- URL: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm Title: No.6501 納税義務が免除される事業者|国税庁 Checked: 2026-10-08 Supports: 基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は原則として納税義務が免除されること
- URL: https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202410/202410e.html Title: 国家公務員等の旅費制度の見直しについて(政令編)|財務省『ファイナンス』令和6年10月号 Checked: 2026-10-08 Supports: 旅費法の改正の施行日(令和7年4月1日)、日当から宿泊手当への変更、宿泊を伴う旅行の一夜当たりの定額
- URL: https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202502/202502j.html Title: 国家公務員等の旅費制度の見直しについて(省令編)|財務省『ファイナンス』令和7年2月号 Checked: 2026-10-08 Supports: 宿泊手当が現行の日当を見直したものであること